研究概要 |
今年度の研究では、2つのテーマに関して特に大きな研究成果が得られた。1.閉曲面上のグラフの持つ性質の解明:本研究によって、タフネスがちょうど1であるようなトーラス上の4-連結グラフがハミルトンサイクルを持つことが解明された。これは1973年に提起されたNash-Williamsの未解決予想(任意のトーラス上の4-連結グラフはハミルトンサイクルを持つ)の部分的解決となっている。一般的に、グラフのタフネスが小さいほどハミルトンサイクルの存在を示すことが難しい。一方、トーラス上の4-連結グラフは必ずタフネスが1以上となる。つまり、得られた結果はNash-Williamsの予想において一番難しいと思われていた状況を肯定的に解決したと言える。したがって、今回得られた結果が予想の完全解決への引き金になることが期待される。2.MatthewsとSumnerの予想に関する成果:3-連結3-正則グラフと密接に関係する大きな未解決問題の一つとして、MatthewsとSumnerの予想「4-連結K_{1,3}-フリーグラフはハミルトンサイクルを持つ」が挙げられる。この予想に関連してLaiらは「3-連結{K_{1,3},Z_9}-フリーグラフはただ一つの例外を除きハミルトンサイクルを持つ」と予想したが、本研究においてLaiらの予想が肯定的に解決された。以上2つの結果に加え、3-連結3-正則グラフにおけるパス因子・サイクル因子のもつ性質についての成果も得られている。以上のように、今年度の研究で多角的かつ未解決問題に対する大きな知見を与える結果が得られた。
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