研究概要 |
研究計画で示した鞍点型問題に対する数値解法の開発について、A=diag(A1,A2)において、行列diag(A1,A2)+B*inv(Q)*Bの最小固有値をLDL分解可能な行列diag(A1,0)+B*inv(Q)*Bの最小固有値により下から抑えることで、行列の疎性やブロック性を生かした効率的な評価法の開発を行う中で、LDL分解が正方行列とならない場合について検討を行ってきたが、多くの問題に対して行列A2の選び方が本質であることが数値シュミレーションにて明らかとなった。すなわち、理論的に行列diag(A1,A2)+B*inv(Q)*Bの最小固有値を行列diag(A1,0)+B*inv(Q)*Bの最小固有値が下から抑えおり、また、どちらも半正定値行列となることから、問題の構造上zero固有値となる部分に加えて、最大最小値原理等により主要固有値が残るように行列A2を選ぶことで、Uzawa型数値解法において必要となる(計算コストの殆どを占める)内反復行列diag(A1,A2)+B*inv(Q)*Bにおいても非常に有効な前処理行列を容易に構成できることが明らかとなり、2重前処理による高速数値計算法の構築は達成可能となっている。また、同様の理由から2重前処理による高速精度保証法の構築は達成可能となっている。但し、高速精度保証においては過大評価が問題となることもあることから、精度保証については、香港理工大学陳小君教授との共同研究として、新たな高速精度保証法の構築について検討を行っている。また、離散化手法の改良については適用範囲を狭める可能性もあったが、上記内反復行列がLDL分解が正方行列として離散化後に計画可能であることから、その必要性はなくなった。よって、本年度は逆に適用範囲を広げることを目的として、重調和問題への適用に取り組み、研究集会でその可能性について発表を行った。
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