研究概要 |
これまでの成果として、関係式、A=diag(A1,A2)において、行列diag(A1,A2)+B*inv(Q)*Bの最小固有値をLDL分解 可能な行列diag(A1,0)+B*inv(Q)*Bの最小固有値により下から抑えることで、行列の疎性やブロック性を生かした効率的な評価法について昨年度は研究を行い、その中でLDL分解が正方行列とならない場合について検討を行ってきた。その結果、多くの問題に対して行列A2の選び方が本質であることが数値シュミレーションにて明らかとなり、理論的にdiag(A1,A2)+B*inv(Q)*Bの最小固有値をdiag(A1,0)+B*inv(Q)*Bの最小固有値が下から抑えていることから、例えば、問題の構造上zero固有値となる部分に加えて、最大最小値原理等により主要固有値が残 るように行列A2を選ぶことで、鞍点型問題に対する高速数値計算法の構築は可能であることから、今年度は数値シュミレーションを中心に行った。但し、精度保証に関しては、昨年度より香港理工大学陳小君教授 との共同研究として、G.H.Golubの結果と本研究の提案手法を組み合わせることにより、鞍点型問題に対する新たな精度保証法の開発に取り組んでいたが、事情により直接的に十分な議論が難しい期間が続いた為、本研究期間での構築が困難となった。 本研究では90年代に多くの解析が行われた理想的な問題のみならず、現実的な実際問題を前提として、多くの問題に対して理論的に高精度を保証する前処理の有用性を確認することができたことは一定の成果と考えている。また、複雑な鞍点型問題に対しては一般的前処理理論ではなく、主要固有値に注意して問題に応じた前処理行列を選ぶことが遥かに実際的であることが確認できたことは、今後の鞍点型問題の解析に大いに役立つものと考えている。
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