研究課題/領域番号 |
22740075
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
原本 博史 愛媛大学, 教育学部, 講師 (40511324)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 応用代数 / 擬似乱数 |
研究概要 |
本年度は2の羃を法とする剰余環上の三項漸化式で生成される擬似乱数列について、下位nビットの分布に関する研究を行った。昨年度はビットが1つ上がるごとに、統計的検定で危険と判断されるサンプルサイズが約4倍になる現象が観測された。本年度も数値実験の結果、より項数の多い漸化式についても同様の現象が観測しており、MacWilliams恒等式に現れる係数を評価してサンプルサイズを計算する方法について、広島大学や東京大学で研究討議を行った。これらの結果をもとに論文を作成し現在投稿中である。またこの結果に関する口頭発表を(1)2012年6月に国際研究集会Workshop for Quasi-Monte Carlo and Pseudo Random Number Generation(東京大学)、(2)2012年8月に日本応用数理学会2012年度年会(稚内市)、(3)2012年9月に研究集会Workshop on Galois point and related topics(山形大学)において行った。 擬似乱数のジャンププログラムに関しては、広島大学斎藤睦夫氏の協力の下、利用者からのプログラムコード改善に関するフィードバックをもとに、2013年1月に最新のコードを作成し、広島大学の擬似乱数関係ホームページに掲載した。 これまでの研究成果や関連分野への入門用に、サイエンス社より刊行された基礎数学教科書において「場合の数」の章を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
擬似乱数のジャンププログラムに関して、本年度も複数の利用問い合わせがあり、いくつかの具体的な改良提案を得ることが出来ている。この結果2013年1月に最新のプログラムコードを広島大学の擬似乱数関連のホームページに掲載することが出来た。 擬似乱数の非統計的検定に関しては当初設定した課題ではないが、項数の多い漸化式の場合や、下位6ビット程度まで実験が完了しており、危険なサンプルサイズが規則的に増加していく様子が観測された。現在論文投稿中であるが、あわせて理論的な研究を行うことによって、計算しやすい最下位ビットの危険なサンプルサイズから、計算機では計算が困難な上位ビットの乱数性を、不安定な統計的検定によらず計算することができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ジャンププログラムに関しては、継続して利用者からのフィードバックを得ることで、プログラムの使いやすさや計算速度向上を目指す。統計的検定プログラムに関しても原型プログラム開発者であるモントリオール大学のレキエ教授と情報交換を行いながら、特に近年の64ビット計算機に適した、サンプルサイズの大きい検定プログラム群を開発する。プログラム作成に関して広島大学を15-20回程度訪問し、松本眞教授および斎藤睦夫助教と研究討論を行う予定である。 擬似乱数の非統計的検定に関しては、本年度中に理論的なサンプルサイズの評価を目指す。具体的には符号理論に現れるMacWilliams恒等式の係数評価によって、危険なサンプルサイズのオーダーを計算する方法を検討している。現在簡単な場合については二項定理より正確な値が計算できているので、これを拡張する方法を検討中である。計算結果について検証するため計算機及び数式処理システムを更新し、これまで困難だった10ビット目周辺のサンプルサイズを計算したい。研究成果については2014年4月にベルギーで開催予定の国際研究集会MCQMC2014における口頭発表を予定しているため、本年度も国内の学会や研究集会に参加し情報収集を行う。
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