研究概要 |
平成25年度は粉末指数付けの新規アルゴリズム・ソフトウェアに関わる論文を4本執筆し、うち3本は年度内にIUCrの国際学術誌に受理された。ただし、粉末指数付けとは、観測された格子ベクトル長さに関する有限個の情報より3次元結晶格子のパラメータを決定する解析のことで、粉末未知構造解析の最初のステージとなる。ここがうまくいかないと次のステージに進めないため、非常に重要な解析である。しかしながら、解の一意性が成立しない(有限性は成立する)ことが知られているため、更なる情報を使用しない限りは、全ての解を提示することが、アルゴリズム上可能な、最良の結果と言える。論文は、それぞれ、(a)格子パラメータのソートを行うfigure of meritの提案,(b)粉末指数付けの全ての解を列挙する新規アルゴリズム,(c)(b)の手法を実装したソフトウェアConographの結果, に関して述べたものである。解の一意性が成立しないことが知られている複数のケースにおいて、実際の粉末回折パターンから全ての解を、一般的な方法により取り出せたことを(c)において示している。また本年度は、粉末指数付けソフトウェアConograph GUIの配布をweb上にて開始した。粉末指数付けは過去半世紀に渡って研究されており既存のアルゴリズムもソフトウェアも豊富に存在する。現在GUIのマニュアルの英訳が終了しておらず、開発者は数学者で、粉末指数付けのユーザが属するコミュニティにそれほど深い関係がない、という状況にも関わらず、論文出版後1, 2ヶ月で、(c)の論文とともに、ソフトウェアConographのページが、"powder indexing"でgoogle検索すると最上位の頁に出るようになった。本研究のインパクトが大きいことが分かる。
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