研究課題
本研究の目的は、量子論の基礎を作用素や情報理論など既存の手法を用い深めることに加え、量子論理・一般確率論や圏論などの数理的手法を用いて再定式化を行いその理論としての位置づけを普遍的観点から明らかにすることにある。研究実施計画においては、特に前半年度では既存の手法を用いた解析に重点を置いていた。平成23年度においては、この計画に沿い研究を行い、(1)同時局在可能性に関する不確定性関係と同時測定不可能性に関する不確定性関係の関係、(2)測定過程における相互作用の解析、(3)アルゴリズム的情報理論を用いた不確定性関係の定式化、(4)アルゴリズム的情報理論を用いた量子メモリの解析、(5)双方向量子通信を用いた量子暗号の解析、に関する5編の論文を出版した。(1)では、これまで理由もなく混同されていた二つの不確定性関係について一定の関連を与え、その混同が正当化されうることを示した。(2)は不確定性関係を用いた解析が測定過程を記述する物理に原理的な制限を与えることを示している。また(3)(4)は量子アルゴリム的情報理論が、シャノンの情報理論と同様に量子論の基礎を探る上でも有用であることを示した初めての例となっている。(5)では、双方向量子通信を用いた量子暗号について、双方向の通信路への攻撃に対する初めての情報撹乱定理を導いた。これらの研究はどれも原理的限界を示すものであり、それぞれ異なる角度から量子論の基礎を深める結果であると考えている。また、本研究課題における研究手法として国際共同研究の推進を考えていたが、現在英国及びフィンランドの研究者と共同研究を進めつつあり、Operational Quantum Physicsをキーワードにネットワークを構築しつつあり、後半年度の研究への足がかりが出来た。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度においては5本の査読付き学術論文を出版するなど、予想以上の成果をあげることができた。しかし、圏論などの手法を積極的に用いる段階にはまだ至っていない。
これまでに築いた英国及びフィンランドとの共同研究をまず推進し、量子測定過程に関する研究及び、固体における量子情報処理に関する計3辺の論文出版を行う。また、圏論・一般確率論や量子論理を手法として用いた普遍的観点からの研究については、産業技術総合研究所におけるライフサイエンスの研究者と議論をさらに進めていく予定である。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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http://staff.aist.go.jp/miyadera-takayuki/