研究概要 |
水銀などの液体金属やプラズマの運動の支配方程式であるMHD方程式について,定常流の安定性の観点からの研究を行った。作用素論的定式化を行う際,速度場については粘着条件の下でのストークス作用素が現れ,磁場については完全導体壁と呼ばれる境界条件下でのストークス作用素が現れる.この為,領域の位相幾何学的形状が解の一意性に影響を与える。完全導体壁の下でのストークス作用素の解析は現在のところあまり行われておらず,MHD方程式のみでなく磁場付きギンツブルク・ランダウ方程式などの解析に有用である まずは,定常問題についての研究を行った。なヴィエ・ストークス方程式に対する儀我・宮川(1985年)に類似の方法で,3乗可積分なルベーグ空間内で小さい定常流を構成する事が出来た。更に,定常流の安定性を調べるために,得られた定常流に微小な撹乱を加えた時に得られる初期摂動問題の解の漸近挙動を調べた。定常流が小さいという仮定の下での線形化作用素のリゾルヴェントを解析し,線形化作用素が解析的半群を生成すること,更にその時刻無限大での減衰は指数関数的であることを示した。生成された半群の正則化・減衰評価を用いて,非線形問題の軟解を構成し,時刻無限大で初期摂動は指数オーダーでゼロに収束する事を示した。即ち,構成した定常解の安定性が示された。 本年度に得られた研究成果は,ポーランドで開催された国際研究集会"Regularity Aspects of PDEs"において報告を行った。また,研究雑誌に投稿する論文を現在準備中である。
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