研究概要 |
今年度は7月までケンブリッジ大学アイザック・ニュートン数理科学研究所において確率偏微分方程式に関する集中研究プログラムに参加し、量子力学ハミルトニアンが導く複素ヒルベルト空間上の線形力学系の再帰性に関する確率解析的研究・飛躍を持つ安定型白色雑音を伴う線形放物型方程式の解の正則性・ガウス型白色雑音を伴う線形輸送方程式に関する係数推定の逆問題について集中して研究を行った。量子系については、Brzezniak, Dawidovichらと有益な意見交換を行い、複素ヒルベルト空間上にハミルトニアンが自然に導くガウス測度がシュレーディンガー流に対する不変確率測度になっていることを示したほか、この測度を積分分解することによってハミルトニアンの固有空間における位相変数が無限次元トーラス上の自然なルベーグ測度を不変にすることを示すことに成功したほか、ワイル変換の無限次元拡張として自然なエルゴード性の条件を示すことができた。この結果についてはニュートン研究所の隔離偏微分方程式セミナーおよびEast Midland Stochastic Analysis Seminarにて研究成果の講演を行った。放物型方程式の解の正則性に関してはBrzezniak, Xieらと共同して研究を行い、特に楕円形作用素の時間方向および空間方向への解の正則化効果について明快な関係式を得ることができた。また逆問題については、Crisan, Peszatと共同して研究を行い、大きな進展が得られたほか、年度末にリオーベン大学を訪問した際にその研究は完成をした。
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