非線形分散型方程式の可解性や漸近挙動について調和解析的手法を用いて研究を行い、 以下の二点に関する結果を得た。 一つ目は、1993年にBourgainによって導入されたFourier制限ノルム法をより精密に改良したKoch-Tataru空間に関する研究である。Fourier制限ノルムは時間に関してソボレフノルム型のノルムとなっているが、Koch-Tataruはこれを有界変動関数に関連するノルムとすることによってより精密な評価が得られることを発見し、KPII方程式の研究に応用した。私は、これまで概周期関数のクラスにおけるKdV方程式の時間局所・大域的適切性についてFourier制限ノルムを用いて研究してきたが、このノルムを適用することにより既存の結果を改良出来るだろうとの予見を得た。 二つめは、高次KdV方程式および高次mKdV方程式に対する一次元トーラス上での適切性の研究である。これは昨年度からの継続課題である。これらの方程式は非線形効果が強く、またトーラス上では平滑化効果が得られないため、扱いが非常に難しいことが知られており、適切性に関する既存の結果はこれまで無かった。 非共鳴部分の微分の損失はnormal form methodを利用することにより回復出来ること、および共鳴部分は方程式の対称性と保存則を利用した線形部分の修正により相殺されることを発見した。これにより適切性を示すことに成功した。
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