研究課題/領域番号 |
22740094
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
渡部 拓也 立命館大学, 理工学部, 助教 (80458009)
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キーワード | 準古典解析 / 完全WKB法 / 超局所解析 / 変わり点 / 断熱極限 / 擬交差 / 遷移確率 |
研究概要 |
一昨年度に引き続き昨年度も主に「変わり点の合流問題に対する超局所解析的アプローチ」について、Paris13大学のM.Zerzeri氏と共同研究を行った。E-mailやSkypeはもちろん、11月9日~28日及び2月29日~3月18日の期間において、自身の渡航により共同研究を重ねた。第1課題であった「2つの変わり点の合流(自由度1)」に引き続き第2課題「複数の擬交差における2つの変わり点の合流(自由度1)」について解決に至った。この研究により、完全WKB法に示唆された2つのパラメータの相互関係に着目した遷移確率の漸近展開を得ただけでなく、その漸近展開の主要項が消えるある種のレゾナント状態を与える2パラメータの関係を見出した。新たに得られた相互関係(より断熱的なパラメータの相互関係)の下では、主要項の係数が時間とエネルギーからなる相空間の幾何学的量によって特徴づけられることがわかった。この結果は、第1課題を含め現在論文投稿準備に入っており、ボローニャ大学の数理物理セミナーで講演を行った。 また昨年度も並行して行った共同研究として、ボローニャ大学のA.Martinez氏及び立命館大学の藤家氏との「2つのエネルギー交差が生成するカップリングシュレディンガー作用素のレゾナンス」の研究を行った。一昨年度のエアリー型フーリエ積分作用素と最急降下法を駆使する手法によるアプローチとともに、今年度はYafaev氏が導入したエアリー型積分方程式のアイデアを連立系に拡張する手法を取り入れた。これにより、連立型のWKB解の解析接続の問題点を克服できると期待している。 同志社大学の浦部氏との共同研究である「同次性に基づいた偏微分方程式の常微分方程式への帰着の一般化」については、弘前大学での研究発表や超局所解析と古典解析研究集会での講演を重ねることで整理され、昨年度論文投稿し、現在審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1課題「2つの変わり点の合流(自由度1)」(一昨年度)及び第2課題「複数の擬交差における2つの変わり点の合流」(昨年度)について解決に至った。論文成果発表としては、第1・第2課題をまとめてひとつの論文として発表することを考えているため、今現在の発表論文は存在しないが、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
第1・第2課題についての結果を論文投稿後、本研究課題の最終目的である「4つの変わり点の合流(自由度2)」について、取り組む予定である。第2課題は最終目的の特別な場合(実軸方向での合流)に相当するため、ある意味目標の半分は解決していると言える。しかし問題となるのは虚軸方向での合流を考える場合で、これまでの研究を踏まえると、超局所解と完全WKB解の接続、特に停留位相法には技術的に複雑な問題が存在することが予想される。まずその点を解決するというのが今年度の共同研究の方針となる。 また、他の共同研究も非常に内容がリンクしているので、できる限り並行して取り組む方針である。
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