研究課題/領域番号 |
22740097
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
吉川 周二 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (80435461)
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キーワード | 非線形偏微分方程式 / 熱弾性 / 塑性 / 相転移 / 形状記憶合金 |
研究概要 |
平成23年度は、定数温度の条件下での三次元の形状記憶合金方程式について研究を行った。Falk-Konopkaの形状記憶合金モデルが考察の対象である。Falk-Konopkaの非線形項は、5次の斉次多項式と3次の斉次多項式を足し合わせた双冪型非線形項である。5次は非線形シュレディンガー方程式においてSobolev臨界と呼ばれる指数であり、さらに3次の項の存在により対応するポテンシャルエネルギーは負の値もとることができるため非凸の非線形項になる。この非凸性が解析を複雑にする。そのためか、三次元形状記憶合金方程式の問題では、この非線形項そのものを取り扱った結果はこれまで見つからなかった。そこで、竹田寛志氏(福岡工業大)との共同研究で、まず摩擦のついた等温Falk-Konopkaモデルの十分小さい解について考察することにした。 この方程式について以下の結果が得られた。まず昨年度研究を行った一次元Falkモデルや極限不安定Cahn-Hilliard方程式と同様の手法で、二次の漸近形まで求めた。解析で鍵となるのはFourier分割法である。ただし多次元問題は連立系のため線形代数で用いられる固有値の単調性定理も重要な役割を果たす。更に、最近竹田氏が消散型波動方程式に対して考案した高次の漸近展開の方法を用いて、三次の漸近形を求めることに成功した。まとめると、一次の漸近形は対応する二階の線形放物型方程式の基本解が対応し、減衰が十分早いため非線形項の影響はない。しかし二次の漸近形では非線形の影響が、三次の漸近形では四階の摂動項の影響までも現れることが確認できた。本結果の新規性は、Falk-Konopkaの非線形項を含んだ形状記憶合金方程式を取り扱った結果であるということと、消散型非線形波動の方程式に対して(おそらく初めて)三次の漸近展開まで得たという二点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「研究の目的」の中で、摩擦付きの問題ではあるがFalk-Konopkaの三次元形状記憶合金問題について一定の結果を得ることをできたことは大きな進展であると考えられるため(2)の評価を与えた。
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今後の研究の推進方策 |
申請段階より、研究期間の中期段階にあたる現段階で研究計画を一度見直すことを研究計画に述べている。この計画に従い、計画に以下の通り若干の修正を加える。今年度得られた等温形状記憶合金方程式の解の挙動についての研究だが、調査すべき問題が残っているため、今年度も引き続きこの研究に重点的に取り組む。一方で、今年度から開始する予定であった塑性効果を含む形状記憶合金方程式の研究については、準備は継続するが研究の時間配分を減らすことで対応する。
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