本年度は研究計画の最終年度にあたるため,次に挙げる研究の総括および論文,口頭発表などによる研究成果の公表を行った. 1)超楕円曲線の加法を用いた周期離散戸田格子の幾何学的実現.周期離散戸田格子は超楕円曲線をそのスペクトル曲線としてもち,その時間発展は超楕円曲線のヤコビ多様体における平行移動に他ならない.超楕円曲線の対称積からピカール群への全射を通して,この対称積上に加法を定めることが可能である.ヤコビ多様体はピカール群と同型であるため,この全射を通して周期離散戸田格子の時間発展を対称積上の加法と見なすことができる.さらに,対称積の加法は超楕円曲線と他の2曲線との交叉を用いて幾何学的に実現できるため,これらの曲線の交叉が周期離散戸田格子の時間発展の幾何学的実現を与える.本研究においては,周期離散戸田格子の幾何学的実現を与える曲線族を任意の種数に対して具体的に構成し,各曲線は周期離散戸田格子の保存量を用いて表されることを示し,その具体的表示を与えた. 2)トロピカル超楕円曲線の加法を用いた超離散周期戸田格子の実現.周期離散戸田格子の超離散極限として得られる超離散周期戸田格子は,トロピカル超楕円曲線をそのスペクトル曲線としてもつ.また,その時間発展は,トロピカル超楕円曲線のヤコビ多様体上の平行移動である.この平行移動はトロピカル超楕円曲線の対称積における加法と見なすことが可能である.さらに,この加法はトロピカル超楕円曲線と他の二つのトロピカル曲線との交叉を用いて幾何学的に実現できる.本研究においては,超離散周期戸田格子の幾何学的実現を与えるトロピカル曲線族を任意の種数に対して具体的に構成し,各トロピカル曲線は超離散周期戸田格子の保存量を用いて表されることを示した.また,これらの曲線族の具体的表示を求めた.
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