オイラー方程式(E)は流体の基礎方程式であり,非粘性圧縮性気体の運動を表す. 微分方程式の分類としは,準線形双曲型に属する.特に,(E)のような方程式は,保存則と呼ばれる.その特徴として,どんなに滑らかな初期値を与えても,不連続解即ち衝撃波をもつ.そのため,弱解を構成する必要がある.また,適当なアプリオリ評価を持たないため,偏微分方程式の常套手段を用いる事が困難で,非線形調和解析もこの方程式に関しては非力である.これらの困難さ故,申請者が研究を始めたときは,一次元の場合以外はほとんどわかっていなかった. 例えば,準一次元と呼ばれる本研究で扱うノズル流も,数学的には殆ど解明されていなかった.この現象は,ノズル中を流れる気体の運動を表す.最も重要なノズルであるラバル管は,亜音速の気体を超音速に加速する.この性質のため,ラバル管は,ロケットや超音速飛行機のエンジンの排気口に不可欠である.また,オーロラの原因となる太陽風の運動と,ラバル管内の気体の運動は,密接な関係があることが知られている.そのため,ノズル流を数学的に解明する事は,物理的にも工学的にも非常に重要である. さて、申請者は,これまでの研究によって,(E)の球対称流やラバル管内の気体の流れを考えて,有界な時間大域解の存在を示した.ラバル管とは,狭まり広がりの形をした管である.球対称流も,方程式としては,単調増加な断面積をもつノズル流と同じ構造を持っている. 本研究では,上記のように断面積が単調性を持たない一般のノズル流を考えた. そして,上記の申請者の手法を用いて,有界な時間大域解の存在を示すことができた.この結果は雑誌に掲載される予定である.また,年度末の日本数学において,本研究内容の発表も行った.さらに,数理解析研究所と早稲田大学において,前年度のラバル管に関する結果の発表を行った.
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