複素変数の線形微分方程式において、ミドルコンボルーションと呼ばれる変換(オイラー積分変換とそれに伴う微分方程式の変換)を主な道具として研究を行った。 ホインの微分方程式とは、リーマン球面上4点に確定特異点をもつ二階線形常微分方程式の標準形である。3点の場合は超幾何微分方程式に対応しており、解の大域的な性質などさまざまな研究が昔からなされてきた。ホインの微分方程式におけるミドルコンボルーション自体は既に知られていたが、報告者はホインの微分方程式においてミドルコンボルーションによって解の性質がどのように変化するかを研究した。 線形微分方程式の確定特異点がみかけの特異点であるとは、その特異点の近傍での解はすべて正則か高々極をもつ(非整数冪や対数項が出てこない)ことである。報告者は、ホインの微分方程式で特異点の一つがみかけの特異点であるものをミドルコンボルーションによって変換すると、多項式かこれと類する(多項式的な)関数を解にもつホインの微分方程式が導出されることを発見し、証明した。そして、特異点の一つがみかけの特異点であるホインの微分方程式に対して、対応する多項式的な解を用いて、もとの解の積分表示を導出した。また、第六パンルヴェ方程式をモノドロミー保存変形で生み出す2階線形常微分方程式に対しても同様の結果を得た。 不確定特異点を含む場合のミドルコンボルーションについても研究をすすめた。不確定特異点を含む場合のミドルコンボルーションの定義を与え、いくつかの基本的性質を導き、例として合流型超幾何関数の場合でうまくいっていることを確かめた。利点として、比較的計算がしやすいということがある。この結果の一部については研究成果欄での論文にて発表した。
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