研究課題/領域番号 |
22740107
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
竹村 剛一 中央大学, 理工学部, 准教授 (10326069)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 可積分系 / ミドルコンボルーション / 複素領域の微分方程式 / ホインの微分方程式 / Inozemtsev模型 |
研究概要 |
従来、数学と物理はともに互いに影響を与えながら発展してきた。例えば、ガウスの超幾何微分方程式は量子力学での模型において非常に重要な関数であり、数学的には複素平面に無限遠点を付加したリーマン球面上で3点に確定特異点をもつ2階の線型微分方程式の標準系であって様々な研究がなされてきた。確定特異点を4つに増やした2階の線型微分方程式の標準系はホインの微分方程式と呼ばれるものであるが、ガウスの超幾何微分方程式と違ってリジッド(局所構造が全体を決定する)ではなく、解の解析もはるかに難しくなる。複素平面におけるフックス型微分方程式系において、ミドルコンボルーションと呼ばれる操作があり、これはオイラー変換という積分変換として捉えることができる。 報告者は、不確定特異点をもつ線形微分方程式系においてのミドルコンボルーションについて、そして、Edwin Langmann氏との共同研究にてホインの微分方程式におけるミドルコンボルーションの多変数化について、結果を得ることができた。 ところで、ガウスの超幾何微分方程式はPoschl-Tellerポテンシャルをもつ量子力学系にも現れ、この模型の固有関数としてヤコビ多項式という直交多項式が現れる。これらにDarboux-Crum変換をうまく適用することによって新たな量子系を得ることができ、その固有関数の主要部としてmulti-indexedヤコビ多項式やmulti-indexedラゲール多項式が得られる。これらには、見かけの特異点が付加されている。佐々木隆氏とHo Choon-Lin氏と共同に、これらの見かけの特異点の合流について研究を行った。とくに、合流が起こるときのパターンを調べ、具体例をいくつも計算し、ホインの微分方程式の解となるものについても得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
確定特異点のみの線形微分方程式系におけるDettweiler氏とReiter氏によるミドルコンボルーションの理論の拡張として、報告者は不確定特異点をもつ線形微分方程式系においてもミドルコンボルーションを構成しており、とくにオイラー変換と直接関連する部分において、ポーランドのBanach center刊行の雑誌に発表した。 また、ホインの微分方程式には楕円関数を用いた表示があり、これはBCn型Inozemtsev系というn変数の量子可積分系において1変数の場合に対応しているが、Edwin Langmann氏との共同研究において、BCn型Inozemtsev系での核関数とこれに関する積分変換について、更なる一般化を含めて結果を得た。1変数であって周期についての微分項がない場合はホインの微分方程式のミドルコンボルーションに対応するものである。 発表論文においても、2012年度に採択されたものが多かった。
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今後の研究の推進方策 |
不確定特異点をもつ線形微分方程式系におけるミドルコンボルーションについて、理論構成に関する結果を発信し、パンルヴェ方程式と関連する結果を改良していきたい。 一方、パンルヴェ方程式にはその差分方程式版(離散版)も知られており、対称性を中心として研究されている。さらに、差分パンルヴェ方程式から超離散化を考えることができる。そうすると方程式はセルラーオートマトンとみなすことができ、新たな展望が期待できる。今後、超離散パンルヴェ方程式についても研究をすすめていきたい。そして、これを基に差分パンルヴェ方程式や通常のパンルヴェ方程式などについての知見も深めたい。
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