研究課題
本年度は、Kobayashi-Warren-Carter型の結晶粒界数理モデルに対する解の漸近挙動を解の一意性なしで考察した。まず、定常問題を考察し、非線形項が一般の関数の場合、定常解(定常問題の解)は少なくとも1つ存在することを示した。非線形項がKobayashi-Warren-Carterにより提案された物理的に重要な関数の場合、定常解は一意に存在することも示した。次に、結晶粒界モデルに対する解の時間無限大での挙動を考察した。実際、結晶粒界運動に度する自由エネルギー関数やエネルギー不等式を用いて、非線形項が一般の関数の場合、解のω-極限集合は定常解集合の一部分であることを示した。特に、非線形項が物理的に重要な関数の場合、一意定常解は安定である、つまり、結晶粒界モデルの任意の解はすべて一意定常解に時間無限大で収束することも示した。このことは既にKobayashi-Warren-Carterによる数値実験で示されていたが、それを数学的に理論的に裏付けできた点は本年度の極めて重要な成果である。更に、非線形項が一般の関数のときの解の漸近安定性をアトラクターの立場から考察した。空間次元が一般の場合、結晶粒界モデルの解の一意性が期待できないので、対応する力学系は多価となるが、その多価力学系に対する大域的アトラクターの存在を示すことに成功した。これにより、非線形項が一般の関数の場合、多価アトラクターの意味で結晶粒界モデルの解の漸近安定性を示すことができた。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Current Advances in Nonlinear Analysis and Related Topics, GAKUTO Internat.Ser.Math.Sci.Appl.
巻: 32 ページ: 389-403