研究概要 |
本年度は箱玉系の対称性について次の成果を得た。 箱玉系は、クリスタル(量子群の組み合わせ的極限)とトロピカル幾何(組合せ的代数幾何)という、出自の全く異なる組合せ的な理論に関係する可積分なセルオートマトンで、本研究の一つの鍵と考えられているモデルである。クリスタルによる箱玉系の対称性の研究はほぼ完成しており、次は箱玉系の一般解に関する(クリスタルから得られた)結果がトロピカル幾何でどのように記述されるかが問題であった。 本年度はまずJ. Phys. Aに依頼されたreview論文"Integrable structure of box-ball systems: crystal, Bethe ansatz, ultradiscretization and tropical geometry"と数理物理Summer school(8月に東京大学で開催)の講演予稿をまとめることにより、既知の結果を整理するとともに問題の明確化を行った。そしてSummer schoolの中で予想「周期箱玉系の一般等位集合を与える高次元実トーラスがあるトロピカル曲線のトロピカルヤコビ多様体である」を与えた。その後、岩尾氏との共同研究によってこの予想を証明し論文にまとめた。より詳しくは以下の手順による:無限箱玉系(境界が無い系)の時間発展方程式が離散KdV方程式の超離散化で書ける、という事実を周期系の場合にも定式化する。離散周期KdV方程式のスペクトル曲線をトロピカル化してトロピカル曲線の族を構成する。箱玉系の従属変数が2状態しかとらないことを取り入れて曲線族の特殊化を行う。 また、3月にBonnのHIM研究所に滞在して上の結果を発表し、さらにトロピカル幾何の応用に関して関連分野の専門家と議論を行った。
|