本年度は次の2つの成果を得た。 自己同型のあるスペクトル曲線をもつ代数的完全可積分系: Beauvilleが導入した多項式行列の商空間上の代数的完全可積分系を制限することにより新しい代数的完全可積分系の族が得られることが分かった。pを素数とし、多項式を成分にもつp次正方行列とそのスペクトル曲線にp次巡回群の作用を定義する。我々が示したことは (i) この作用で不変なスペクトル曲線Cの上にBeauville系を制限することができる、(ii) この制限によって等位集合は有限個の連結成分に分解し、その一つ一つが代数曲線C'のアフィンヤコビ多様体と同型になり、可換な時間発展はこの多様体上で線形化される。ただしC'はCを巡回群の作用で割った代数曲線である。この研究はPol Vanhaecke氏(Poitiers大学)、山崎隆雄氏(東北大学)との共同研究で、結果を論文にまとめた。 クラスター代数を用いた結び目不変量の計算: 昨年度に引き続き、樋上和弘氏(九州大学)と共同研究を行い、次の結果を論文にまとめた。組みひも群をクラスター代数のmutationを使って実現し、任意の結び目について組みひも表現から結び目補空間の複素体積(双曲体積 + i Chern-Simons不変量)を計算する方法を構成した。実際の計算が技術的に難しく数値計算が遂行できる例は今のところ少ないが、双曲結び目でない場合にもこの方法が適用できることが観察され、体積予想との関係が示唆されている。関連する成果を8月に国際会議「SIAM conference on applied algebraic geometry」(コロラド州立大学)の招待基調講演、1月に国際シンポジウム「RIKKYO MathPhys 2014」(立教大学)の招待講演で発表した。
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