フェルミ衛星の理論メンバーの一員として、ガンマ線バーストやパルサー星雲の観測結果に対する理論的考察を行い、論文作成に貢献してきた。ガンマ線バーストのスペクトルを広いエネルギー領域に渡って調べてみると、MeV付近にピークを持つ、以前から知られていた主成分とは異なる、ベキ分布を持った別成分がGeV領域やkeV領域にあることがわかり、多くの研究者を驚かせた。さらにそれらの観測結果と我々の数値シミュレーションとの比較を行い、高エネルギー宇宙線加速の兆候を探った。我々のシミュレーションでは、加速された宇宙線がガンマ線と相互作用し、π中間子を作り、ここから電磁カスケードを起こす事で、ベキ分布のガンマ線が放たれる。この結果は観測されている別成分の傾向と比較的良く一致しており、我々は加速されている宇宙線の量に制限をつけることができた。このように、観測された別成分はガンマ線バーストで最高エネルギー宇宙線が加速されている可能性を示唆しており、大変興味深い。これらの結果は論文及び学会、国際会議での発表という形で今年度報告された。 また、フェルミで観測されたパルサー星雲のスペクトルも、ガンマ線を放射する電子に対して非常に不可思議な分布を要求しており、粒子加速理論に新たな謎を投げかけている。 また活動銀河核(AGN)での宇宙線加速に関する研究も行った。電波を放つ比較的コンパクト(数pc)なAGNが新しいカテゴリーとして最近注目を集めている。通常の電波銀河(サイズが数kpc)とは異なり、そういったAGNで宇宙線が加速されていれば、高い光子密度のおかげで、光中間子反応を介してカスケードを起こし、二次ガンマ線が放たれる可能性がある。我々はこの状況に応じたシミュレーションを実行し、将来のガンマ線観測計画CTAでこういったガンマ線が検出される可能性を指摘した。こういった理論的予言は観測計画に対しても大きな刺激になっている。
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