研究概要 |
超新星残骸衝撃波を始めとする天体衝撃波では衝撃波で加速された宇宙線の反作用によって衝撃波の構造が変性を受ける宇宙線変性衝撃波が重要となる可能性が指摘されている.これは被加速粒子のスペクトルが衝撃波の変性によって影響を受け, 更にはこれによって粒子加速効率が向上する正のフィードバック機構が働く可能性があるためである. 一方で, 我々の最近の研究ではパルサー風の終端衝撃波に見られるような相対論的衝撃波において大振幅の電磁波が自発的に励起され, 上流のプラズマとの強い非線形相互作用を通じて同様の衝撃波構造の変性が起こることが分かってきた. そこで本年度は, より広い視点から変性衝撃波の構造に着目して研究を進めた. 新たに開発した相対論的2流体シミュレーションを用いて, 高速回転するパルサーによって励起された電磁流体波動を伴うパルサー風中の終端衝撃波の数値シミュレーションを行うことに成功した. これによって, パルサーの回転周波数が終端衝撃波における固有プラズマ周波数よりも高周波の場合には上述のような電磁波の励起が起こり, 励起された電磁波は超音速の上流に伝搬し, 散逸を通して上流プラズマの強い加熱および減速を引き起こすことが分かった. ここで, 大振幅電磁波が宇宙線変性衝撃波における宇宙線と同様の役割を果たすことを明らかにした. 即ち, 衝撃波において励起された電磁波は初期には下流向きに伝播しているが, 密度擾乱によって散乱されることで上流に染み出し, 変性を引き起こす. これは宇宙線が散乱を受けながら上流へ拡散し, 上流で変性を引き起こす過程に酷似している. 宇宙線変性衝撃波では変性による粒子加速効率の向上が示唆されているが, 同様の効果が相対論的衝撃波の変性でも起こるかどうかは大変興味深い今後の課題である.
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