本研究はNANTEN2望遠鏡によるCOの高励起線観測を複数の超新星残骸に対して行い、付随する分子雲の分布・性質を明かにすること、また、SuzakuのX線のデータ、Fermi、HESSのガンマ線のデータを用いて、SNRでの衝撃波加速の物理、ガンマ線放射起源の詳細を明らかにすることである。初年度である今年度は下記のことを遂行した。 (1)COによる観測 NANTEN2望遠鏡を用いて^<12>CO(J=2-1)輝線でW44並びにVela Jr.の全面観測を実施し、詳細な分子雲の分布を明らかにした。また、HESS J1614-518のX線放射領域に対し、^<12>CO(J=2-1)輝線の観測を行った。これは今後超新星残骸に付随する分子雲の性質を明らかにする第一歩である。 (2)ガンマ線との比較 Fermiチームと共同でW28において分子雲とガンマ線の比較研究を行い、ガンマ線の放射起源が陽子起源である可能性について言及した。ガンマ線放射起源が陽子起源であるということが議論できるようになったのは近年のHESS、Fermiの活躍によるものであり、その先駆的な研究として重要である。 (3)X線との比較 RX J1713.7-3946において、^<12>CO(J=4-3)輝線で検出した高密度分子雲コアとX線放射分布との空間的な比較を行った。両者は反相関の関係にあることをつきとめ、X線は高密度コア内部に浸透していないことを明かにした。 (4)水素原子雲の観測 Vela Jr.の一部はATCA+PARKESのアーカイブデータの範囲外にあるため、ATCA干渉計を用いて該当部分の観測を行った。特にガンマ線の陽子起源を議論する場合には星間物質の総量を見積もらなければならないため、分子雲と並んで水素原子雲の分布を明かにすることは重要である。本観測によりVela Jr.全体の水素原子雲の詳細な分布を初めて明かにした。
|