研究課題/領域番号 |
22740120
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
磯部 直樹 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究員 (80360725)
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キーワード | X線天文学 / 活動銀河核 / バイナリブラックホール / 周期的光度変動 / X線長期観測 / 全天X線監視装置MAXI |
研究概要 |
本研究の目的は、2009年夏に国際宇宙ステーションに搭載された全天X線監視装置MAXIによってえられる史上最高の全天のX線観測のデータを用いて、周期的なX線光度変動をする活動銀河を探査することで、巨大バイナリブラックホールの存在を証明または制限することである。巨大バイナリブラックホールとは、中心に合体直前で連星状態になった二つの巨大ブラックホールが存在する活動銀河であり、巨大ブラックホールが合体を繰り返すことで形成されたこと証明する、重要な観測対象である。 周期的X線光度変動をする活動銀河を発見するには、多数の活動銀河のX線光度を長期間にわたって、正確に測定することが重要である。活動銀河核はX線フラックスが比較的小さいため、精度のよいX線測光にはMAXIのバックグラウンドモデルと点源応答関数が最も重要である。そこで本年度は、キャリブレーションに重点を置き、昨年度に基礎を構築したMAXIバックグラウンドモデルと点源応答関数の完成を実施計画の中心とした。そして、MAXIの1年以上の観測データをもとに、それらの精度を高めることに成功した 実際に、完成したバックグラウンドモデルと点源応答関数を解析に取り込み、MAXIの測光精度が高まったことを確認した。そして、その手法を初期の7か月の観測データに適用し、MAXIによるX線源のカタログの第1版を完成し、論文として出版した。このMAXIカタログの中から、本研究の観測対象となりうる活動銀河核を約50個リストアップすることができた。現在、これらの活動銀河の監視観測をMAXIによって続けており、長期のX線光度曲線のデータベースを構築しつつある。また、その中から特にX線フラックスの強い活動銀河を数個選択し、時間変動解析の手法を確立しつつある。 さらに、MAXIによる観測結果をもとに、バイナリブラックホール探査専用の超小型衛星のアイデアを考案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の実施計画に挙げた、全天X線監視装置MAXIのバックグラウンドおよび点源応答関数の構築を完了し、それを用いた精度の高いX線測光方法を確立できたこと。また、それをMAXIの観測データに適応し、本研究の対象となる活動銀河核をリストアップできたこと。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に確立したX線測定の手法を、2009年9月にMAXIが稼動してから約3年間の活動銀河核のすべての観測データに適応し、長期のX線光度曲線のデータベースを完成する。それをもとに、周期的X線光度変動をする活動銀河核を探査する。発見できた場合には、理論と比較することで、それが巨大バイナリブラックホールかどうかを特定する。発見できなかった場合には、その存在に制限をつける。なお、MAXIは今なお順調に観測を続けており、本研究の遅延などの問題は想定していない。ただし、バックグラウンドや点源応答関数は経年変化が予想されるため、常にキャリブレーションを続ける。
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