研究課題/領域番号 |
22740123
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
長島 雅裕 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20342628)
|
キーワード | 宇宙物理 / 理論天文 / 銀河形成 / 重元素 / 宇宙進化 |
研究概要 |
本研究の目的は、銀河の形成・進化の解析をもとに、宇宙における重元素生成史を理解することである。現在の宇宙では、バリオンの約2%(質量比)が、ビッグバン元素合成では生成されない炭素や酸素などの重元素である。全体に比してわずかな量であるが、この重元素なしには惑星も生命も存在できないため、我々の宇宙を理解する上で重元素量の進化を理解することは極めて重要である。また、銀河の観測量としても、重元素により合成されるダストにより主に短波長の光が隠されるため、銀河の色が変化し、観測量を理解する上でも重元素量の進化を理解することは重要である。 本研究においては、申請者が開発を進めてきた銀河形成の準解析的モデルを用い、重元素量の進化に関する計算を実行し、観測と比較することで、重元素の生成史の一端を明らかにする。 本年度においては、重元素から形成されるダストに注目し、モデル拡張のための第一歩として、赤外線衛星「あかり」の結果から、どのような星形成過程が考えられるかを調べた。その結果、ダストによる紫外線の自己遮蔽が効かなくなるような薄い面密度を持つような銀河では、星形成が抑えられることがわかった。薄いガスを持つ銀河では星形成率が落ちることが知られていたが、その原因として、ダストによる自己遮蔽が示唆されたと言える。 さらに、従来の単純な星形成モデル(星形成率が銀河に含まれるガスの量に比例)を超え、ガスの面密度を考慮したモデルを開発し、赤外線衛星「あかり」による観測結果との比較を開始できるところまで、モデルの改良を進ませることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダークマターの計算はほぼ終了しており、銀河形成の準解析的モデルに組込む体制はできあがっている。Ia型超新星を組込む結果を安定的に入れるところの進展がやや遅れぎみであるが、本質的な問題ではない。
|
今後の研究の推進方策 |
銀河形成の準解析的モデルの改良をすすめ、重元素組成に関する計算をすすめる。ただし、スペクトルそのものの比較に関しては、スペクトルモデルを開発している海外グループとの関係があるため、最終年度中に計算を終わらせることは困難な可能性があるが、重元素の生成史を理解するという観点からは本質的な問題ではないと考えており、他の観測量との比較から概略は理解できるであろう。
|