研究課題
本研究は、宇宙最大の天体である銀河団に注目し、X線や他波長の観測から銀河団のダイナミックな進化を解明することを目的としている。今年度は、国際天文学連合の依頼をうけ、銀河団のX線分光観測の基礎と最新の研究成果について招待レビュー論文を執筆した。この論文は国内外の誰もがアクセスできるオンラインジャーナルとして公開された。また、これまでに「すざく」衛星の広帯域X線観測に基づいて銀河団からの硬X線放射の起源を詳細に検討したところ、そのほとんどが熱的放射で説明でき、有意な非熱的硬X線放射はないことがわかった。この超高温ガス・非熱的ガス探査の結果について、国際会議で招待講演を行った。次に、最大離角をもつ多重クエーサーSDSSJ1029について、Chandra衛星のX線データから重力レンズ銀河団の性質を調べた。ガス分布は不規則でかつ温度が高いことから衝突銀河団であると考えられる一方、銀河団中心領域では静水圧平衡を仮定した銀河団質量はレンズ質量と一致することがわかった。これらの結果について査読つき論文を出版した。加えて、銀河団に含まれるガスの密度分布に注目した研究も行った。銀河団は形成から十分時間が経過すると、ガスは重力ポテンシャルに緩和し、中心では放射冷却によって温度が下がるためクールコアを形成する。従来の理論では冷却が加速的に進むため宇宙年齢のうちにガスが冷え切ってしまい、観測と矛盾するという問題があった。そこで、準静水圧平衡の条件のもとで計算したクールコアのガス密度分布と観測結果との比較を進めた。その結果、密度・圧力・エントロピーの観測結果を説明できることやX線表面輝度分布が二重βモデルでよく再現できることを示した。この成果を国際会議で発表した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件)
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