我々は次世代の30m望遠鏡およびスペース望遠鏡に適用可能な、近赤外線および可視光用の高分散素子であるZnS製のイマージョングレーティングの開発を進めている。 本年度は、ZnSの加工特性を調べるために1インチサイズのCVD-ZnS基板および特性が近く比較対象として最適な材料であるZnSe基板への加工による試験を行った。加工は、共同研究者であるP.J.Kuzmenko博士が所属するアメリカのローレンスリバモア国立研究所のPERL-IIを用いたフライカット法によって行った。その結果、チッピングの少ない良好な溝形状が得られ、独自開発した光学測定システムからは、回折格子において重要なパラメータである溝ピッチ誤差や面粗さともに10nm(rms)以下に抑えられてることが確認できた。本結果の一部は、2010年の夏にアメリカのサンディエゴで開催された国際会議(SPIE : Astronomical Telescope and Instrumentation)にて口頭発表による報告を行った。さらには、応用例の一つとして期待されている次世代スペース赤外線天文衛星(=SPICA)への搭載への検討の一環として、当該衛星に搭載可能なコンパクトな光学系の設計検討を行い、その結果と可能性についての報告を2度の日本天文学会(2010年9月(金沢大学)および2011年春(筑波大学))にて行った。 次年度は、本年度の結果をもとに実際に使用可能な小型の回折格子の実現と反射面コーティングの試作検討を実施する予定である。
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