研究課題/領域番号 |
22740125
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
池田 優二 京都産業大学, 理学部, 准教授 (40550611)
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キーワード | 赤外線 / 可視光 / 高分散 / イマージョングレーティング / ナノテクノロジー |
研究概要 |
我々は次世代の30m望遠鏡およびスペース望遠鏡に適用可能な高分散素子であるZnS製のイマージョングレーティングの開発を進めている。 本年度は、昨年度に実施したZnSおよび同等材料であるZnSeの加工条件調査の結果を基にして、回折面サイズが50mmx80mmのプリズム上への精密溝加工を実施した。これによって小型ながらもほぼ完全な形でのイマージョングレーティングを得ることができる。加工は昨年度までの同様、共同研究者であるP.J.Kuzmenko博士が所属するローレンスリバモア国立研究所のPERL-IIを用いたフライカット法によって行った。その結果、加工試験時と同様の数nmのピッチ誤差を達成する良好な溝形状が得られていることが、独自開発した光学測定システムによって明らかになった。しかしながら、試験加工に比較して、1.チッピングが多い、2.回折面の面精度が悪い(スペック値λ/4に対して、λ程度の面精度)、3.ブレーズ角が狙い角から3度ほどずれている、といった新たな課題が認められた。これらの原因を詳細に調査したところ、1は高均質材を使えば問題ないこと、2は加工時の気圧変動が原因であること(温度はΔT=0.01Kでコントロールしている)、3はダイヤモンドバイトの角度にずれがあったことが分かった。 さらに、反射面コーティングの試作も行った。反射率は高いがZnSへの密着度が悪いAuの代わりに、SiO2を密着層としたCu反射膜の設計を行い、ZnS基板へのコーティング試験を実施した。製作したコーティングの反射特性を測定したところ、仕様全波長域反射率にしてスペックを満たす90%以上の反射率を達成していることが分かった。現在、高湿度環境下での耐性試験を実施中である。 次年度は、本年度判明した課題点に対して対処を施したサンプルの試作および、ここまでの結果を夏に行われる国際学会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最大の目標であった、小型のプリズム型イマージョングレーティングを試作し、最終性能に近い光学性能が得られているため
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度明らかになった課題点について対処を施した、さらに高性能のイマージョングレーティングの製作を目指す。課題の原因については、本年度実績で述べたようにおおむね特定できているので、比較的短期に実施できると考えられる。加えて、反射面コーティングの環境耐性試験の結果を受けて、実際に回折面へのコーティングも実施する予定である。なお、世界で初めて実現させたプリズムグレーティングの実績と評価結果については来年度欧州で開催される国際学会にて発表する予定である。
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