本研究は、現在ミリ波・サブミリ波帯での次世代受信機として世界的に開発及び実用化が進められている導波管型サイドバンド分離(2SB)受信機の一つの重要な性能である「サイドバンド分離比」の自動評価システムを開発し、実際に望遠鏡に搭載して運用することを目標としている。特に、我々がこれまでに世界で初めて実用化に成功し、野辺山45m望遠鏡に搭載したサイドバンド分離比評価システムについて、さらにその測定の高精度化を目指すものである。今年度は、実験室レベルにおいて、これまでに開発した較正装置のさらなる測定精度の改善を目指した。具体的には、その心臓部である信号の発振器周りの開発として、従来はハーモニックミクサを用いて周波数を逓倍していた信号源に、100GHz帯の周波数逓倍器+増幅器を使用し、信号強度と安定性を向上させた。また、定在波を防ぐための放射部の改良として、従来用いていたフィードホーンをプローブホーンに変更するとともに、電波終端(エコソーブ)の形状を改善し、伝搬経路も従来よりも長い距離に変更した。さらに、測定周波数帯域を従来の5~7GHzから、新型受信機の4~8GHzの広帯域に対応した新たな評価プログラムをLabVIEWを用いて開発した。以上のように新たに開発を行った較正装置を用いて、2SB受信機のサイドバンド分離比を測定したところ、テストシグナルを放射するホーンと受信機ホーンの間で発生していた定在波の発生が大幅に低減したことが確認できた。これは、従来よりも高い精度でサイドバンド分離の測定が期待できることを示している。
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