本研究は、現在ミリ波・サブミリ波帯での次世代受信機として世界的に開発及び実用化が進められている導波管型サイドバンド分離(2SB)受信機の一つの重要な性能である「サイドバンド分離比」の自動評価システムを開発し、実際に望遠鏡に搭載して運用することを目標としている。特に、我々がこれまでに世界で初めて実用化に成功し、野辺山45m望遠鏡に搭載したサイドバンド分離比評価システムについて、さらにその測定の高精度化を目指すものである。今年度は、昨年度までに実験室において開発・評価実験を行ってきた新たな評価システムを45m望遠鏡に搭載し、実際に共同利用で用いられている2SBタイプの100GHz帯受信機でのサイドバンド分離比の評価において本格的な利用を開始した。これにより、観測シーズン前のミクサチューニングパラメータ(最も受信機雑音温度が低くなり、サイドバンド比が高くなるバイアスポイント)の測定とパラメータの決定、共同利用観測毎のIF周波数に対する観測周波数でのサイドバンド分離比の測定と測定値を用いた絶対強度の較正などが行えるようになった。この新たな較正装置によって測定されるサイドバンド分離比の値と、実際に観測される天体の輝線から求められるサイドバンド分離比の値を比較したところ、その測定精度は、±5%の誤差範囲内に収まっており、従来の較正装置の誤差をおよそ半分に低減させることに成功した。さらに、この較正装置を新たに45m望遠鏡に搭載した100GHz帯2ビーム両偏波2SB受信機にも使用し、同様にサイドバンド分離比の測定が可能であることが確認できた。これは、本較正装置の仕様が汎用性に優れ、他の望遠鏡システムにも応用が可能であることを示している。
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