研究課題
多数の超新星爆発等によって形成された膨張シェルは周囲の低密度ガスを圧縮、誘発的に星、分子雲を形成すると考えられている。大マゼラン雲(LMC)には、スーパージャイアントシェル(SGSs)と呼ばれる1kpcを超えるシェル構造が同定されており、銀河全体の大質量星や星団、巨大分子雲の形成効率や銀河の構造にも大きく寄与していることが観測的にも示唆されてきた。今回、我々はLMCでも最大のSGSL MC4に付随したHII領域N48,49に着目した。この領域は、2つのSGS LMC4,5に挟まれた領域であり、二つのシェルの衝突によって、効率的に巨大分子雲や大質量星形成が誘発されている可能性もあり、30 Doradus(LMC2,3が衝突)の形成起源の理解にも繋がる興味深い領域である。この領域に対して、ASTE望遠鏡によるCO,13CO(3-2)輝線による高分解能観測を実施した。衝突領域に付随していると思われる複数の高密度ガス塊は、高いCO(3-2/1-0)比を示し、SPITZER望遠鏡で検出された複数の若い天体(YSO)の付随も確認され、シェルの衝突による誘発的星形成の現場を初めて捉えたといえ、投稿論文としてまとめている。一方、様々な形態・性質をもつ銀河に対する分子ガスのサーベイ観測は、大局的な銀河スケールでの星形成、分子ガスの性質を統計的に研究する上で大変重要である。NANTEN2望遠鏡を用いたCO(1-0)による近傍銀河のサーベイ観測をさらにすすめ、31個の銀河について中心の一点観測を行い、18個の銀河でCOを検出、うち13個については初検出であった。開発面では、サブミリ波帯でのミラーの反射効率測定を150GHzから900GHzまで実施した。特に、鏡面の面精度、素材、金めっき等の鏡面処理が、ロス等にどのような影響があるかも調査し、高い周波数では、オーミックロスの影響が無視できないことや純金めっきの重要性を示した。
2: おおむね順調に進展している
ALMAのcycleOの観測時間を獲得することはできなかったが、ASTE,NANTEN2の観測は順当にすすんでおり、Mopra 22m鏡によるN48/49領域の観測時間も確保した。
巨大分子雲中で星団がどのように形成され、進化していくのかを理解することは、銀河全体の星形成率を何がコントロールしているのか、さらには宇宙の星形成率の歴史という問題に対する理解にもつながり、天文学上、大変重要である。最終年度は、これまで得られた観測データをもとに、大局的な星形成則を局所的な星形成の物理過程として理解する試みをマゼラン銀河について実施する。また、銀河系やその他の近傍銀河とも星形成則を比較、何が銀河全体の星形成率を支配しているのか、銀河のタイプや環境との関係を定量化し、これを遠方の銀河にフィードバックし、銀河進化の研究へ貢献することを目指すとともに、ALMAの観測時間の獲得を目指す。
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The Astrophysical Journal
巻: 746
10.1088/0004-637X/746/1/82
The Astronomical Journal
巻: 142
DOI: 10.1088/0004-6256/142/4/102
巻: 737
10.1088/0004-637X/737/1/12
巻: 738
10.1088/0004-637X/738/1/46