本研究の目的は、早稲田大学の那須パルサー観測所(以後、那須観測所)で繰り返し行っている広域サーベイによって見つかりだした「電波領域において突発的に輝く天体(以後、電波トランジェント)」の正体解明に向け、主に国内の電波天文用観測網を利用することで、トランジェント現象の起源天体及び天体物理学的性質を探ることである。特に那須観測所の広域サーベイによって電波トランジェントが検出された後、数時間以内に天文観測装置の中で最も高い位置決定精度を持つ超長基線電波干渉計(VLBI)を用いて観測することで、対応天体の同定が期待できる。 那須観測所に設置予定の新観測装置については様々な要因によって性能出しが当初より遅れ、未だ本観測には至れていない。しかしながら「取得データの自動解析システム(Tanaka et al. 2012)」や、突発現象検出時における自動発信システムの「検出データ信頼度評価システム(Aoki et al. 2012)」については現観測システムにおける定常運用が進められており、突発現象のモニター体制自体の整備は予定通り進んでいる。 高感度・高精度VLBI観測システムについては予定通り整備が進んだ。実際に突発現象への対応を想定し試験的に短時間のスナップショット観測である領域内の多くの候補天体を観測するという試験を重ねた。本試験観測により実際の観測における性能評価が進むとともに、改善点の洗い出しを行なうこともできた。また2010年に発生した活動銀河中心核天体の大フレアに対し、突発現象に国内VLBI観測網として対応するという実績を作ることができていたのだが、その観測結果の論文(Niinuma et al. 2012)も査読雑誌に受理された。 また多角的視点から電波トランジェントの起源解明を目指し、重力波の研究者との共同研究を始めており、重力波研究者によるセミナーも開催した。
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