研究概要 |
近年、PAMELAやFermiなどの観測を機に、宇宙線の電子・陽電子成分の起源が注目を集めている。申請者らは最近X線観測で発見された強磁場白色矮星が観測スペクトルに寄与する可能性を調べ、PAMELAやFermiのスペクトルをよく再現できるだけでなく、今後観測が進むと考えられるTeV以上のスペクトルにその特徴が現れる可能性を指摘した(Kashiyama et al. 2011)。また、TeV以上のスペクトルに寄与すると考えられる若いパルサーは超新星残骸の衝撃波に取り囲まれていると考えられるが、宇宙線粒子の逃走モデル(Escape-limited model)によると衝撃波近傍の磁場(時間とともに弱くなる)が荷電粒子をトラップするため、高いエネルギーの宇宙線粒子ほど先に逃走し、低いエネルギーのものはあとから逃走することが予想される。この仮定に従い、申請者らはパルサーから放出された電子・陽電子のうち超新星残骸を通過してきたもののみが観測されると考え、そのスペクトルを求めるとともにCALET等の将来計画でその検証ができることを示した(Kawanaka et al. 2011)。また、超新星残骸で加速された陽子が起こすハドロン反応により生成した陽電子の存在を検証する手段として、電子・陽電子対消滅輝線の観測が有効であることを指摘し、論文にまとめて投稿した。観測が実現すれば天体で陽電子が大量生成されていることを示す傍証となりうる(Ohira et al.2011, submitted)。
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