研究概要 |
今年度、以下の2課題を遂行した。 (1) 中性子過剰Ne,Mg同位体の励起スペクトルの理論的予言と反応断面積の評価 反対称化分子動力学を用い、安定核から中性子ドリップラインに至るまでのNe,Mg同位体の励起スペクトルおよび、電磁遷移確率などを求めた。その結果、ドリップライン近傍では、用いる有効相互作用依存性が大きいものの、パリティの逆転など、魔法数の破れに伴った特異な現象が起こる可能性を指摘した。得られた成果を複数の国際会議で発表し、また誌上論文を準備中である。さらに、反対称化分子動力学による解析で得られた波動関数を元に、Ne, Mg同位体の反応断面積の評価を行った。その結果、魔法数の破れに伴って、反応断面積が増大すること、また31Ne,37Mgでは中性子ハロー構造が現れ、反応断面積が極端に大きくなり、観測された反応断面積の振る舞いをよく説明する事をしめした。これらの結果を、国際会議及び誌上論文2編にて発表した。 (2) 直交条件模型による21Neの分子軌道状態の記述 α+16O+nの3体模型(直交条件模型)によって、21Neの励起スペクトルを記述し、コア核(20Ne)におけるクラスター構造の発達と、余剰中性子の運動(分子軌道)との関係を調べた。その結果、余剰中性子がπ分子軌道を占有した状態、σ分子軌道を占有した状態の2つの状態で、クラスターが発達し、その結果パリティ2重項が現れることを発見した。この理論計算は、観測されている21Na-21Ne間のクーロン置換エネルギー差を非常に説明し、21Neにおいて実際に分子軌道状態が存在することを強く示唆する。この成果を国内研究会で発表し、現在誌上論文を準備中である。
|