本課題研究により最適化・製作を行った位置較正システムを用いて、液体キセノン検出器(XMASS検出器)の内部に様々なエネルギーのガンマ線(またはエックス線)を放出する較正源を挿入し、検出器の検出効率・位置再構成能力・エネルギー直線性の評価を行った。 平成24年度は、昨年度に引き続き、57Co較正源(外径0.2mmのステンレスチューブに封入、KRISSと共同開発)をXMASS検出器の内部に挿入し、較正源から放出される122keVガンマ線に対する検出器応答を詳細に調べた。検出器内部の様々な位置で取得したデータから、事象の発生位置がシミュレーションの期待通りの位置分解能で再構成されることが確認された。エネルギー分解能に関しては、検出器内に残存している微小な電場の影響で、シミュレーションで期待される値より悪くなることが昨年までの研究で分かっていたが、本年度は、較正源を駆動している無酸素銅製の部品に工夫を施し、電場の影響を0.5%以下に抑えることが可能になった。 また、昨年度から引き続き、55Fe較正源から放出される5.9keVのエックス線のデータの取得・詳細解析も行った。較正源からのエックス線は、厚み50ミクロンの真鍮製窓を通りぬけた後に液体キセノン中で光電吸収を起こし、シンチレーション光を放出する。5.9keVエックス線の液体キセノン中での吸収長は約5ミクロンと短いため、較正源(半径4mmの円柱形)自身はシンチレーション光の約50%を吸収・反射する(較正源自身の影効果)。本研究により、5.9keVという低エネルギー事象に対して、較正源の影効果を正しく考慮に入れたシミュレーションによる期待通りの検出器応答を確認することに成功した。 これらの結果から、XMASS検出器のエネルギースケールと直線性からのずれの系統誤差の算出を行い、暗黒物質探索の感度を正しく評価することが可能になった。
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