研究概要 |
本研究は、飛行時間法を用いた不安定原子核の質量測定手法の確立、および開発手法を用いて、大強度重イオンビームの入射核破砕片または核分裂片に含まれる多種の不安定核の質量を系統的に測定する。広範囲にわたる測定を通して、特定の領域に発現すると考えられている魔法数生成・消滅現象を探索し、その発現メカニズムの統一的な理解が可能になる。本研究ではとくに中性子過剰核^<54>Caを中心とした核領域を研究対象とする。この領域は新たな魔法数の生成が理論的に予言されている領域である。実験を通して魔法数発現の有無を確証し、中性子過剰酸素同位体で見られるN=16魔法数発現領域との比較から核物質における魔法数発現の普遍的なメカニズムの解明を目的としている。 平成22年度は飛行時間法において重要な時間測定用カウンターとしてプラスチック検出器およびダイヤモンド検出器の開発を進めた。ダイヤモンド検出器は薄膜状の検出器の作成が可能であり,プラスチック検出器に比べて1桁程度高い立ち上がり時間を持つことから粒子を通過させるスタートタイミング検出器として最良の検出器である。近年、3cm四方サイズの多結晶ダイヤモンド検出器の製作が可能になり、質量分解能向上のため開発を進めてきた。2011年1月には、時間測定に特化したダイヤモンド検出器の設計について理化学研究所で行なわれた最先端放射線検出器のワークショップで発表を行なった。さらに、同1月、ダイヤモンド検出器の性能評価として、核子あたり8.8MeVの4Heビームの照射実験を行なった。性能項目は、(1)多結晶ダイヤモンド検出器の重イオンビームに対するシグナル波形データ取得、(2)有感厚測定、(3)検出効率、(4)エネルギー分解能、(5)時間分解能である。現在は、取得したデータの解析が進行中である。
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