1. LHC実験で生成される標準模型由来の様々なプロセス(weak bosonを1もしくは2個含んだり、topクォークペアやhiggs bosonを1個以上含んだりするmulti-jetプロセス。ただし、これらのプロセスで生成された重い粒子は最終的にはLHC実験で観測される軽いクォークやレプトンへ崩壊するとして計算している。)の散乱断面積等について、GPGPU技術を用いて高速に計算するシミュレータを開発し、計算を行った。GPUを用いた計算結果とこれまでのCPUを用いた計算結果の比較を行い、結果が誤差の範囲で一致する一方で、計算速度が単純なプロセスでは100倍程度、複雑なプロセスでも約10倍ほど高速になることを確認した。これらの結果を論文としてまとめ、査読付き学術専門誌(Eur.Phys.J)に掲載した。なお、この計算システムにはNVIDIA社のGPUを使用し、開発言語としてCUDAを用いた。 2. 上記研究に用いたプログラム(HEGET in CUDA)をsubversionシステムを用いて配布するサイトの構築を行った。また、プログラムの利用方法の説明やメンテナンスを目的としたサイトの構築も行った。 3. GPGPU技術の開発に使われる統一言語であるOpenCLを用いて、NVIDIA社と並んでGPUを開発・販売しているAMD社のGPUを用いた高速計算を行うシステムの開発を試み、基礎的なプログラムを完成させた。これらの成果は順次、上記サイトにて公開していく。 4. 所属機関を変更したのに合わせて、GPGPU技術の素粒子物理学以外への応用について検討を行った。特に医療画像解析に必要な演算をGPGPU技術を用いて高速で行うプログラムを開発し、その速度向上について所属大学生と共に検討を行った。
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