研究課題/領域番号 |
22740156
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
野中 千穂 名古屋大学, 基礎理論研究センター, 助教 (10432238)
|
キーワード | 原子核理論 / 素粒子論 / クォーク グルーオン プラズ |
研究概要 |
重イオン衝突実験理解を視野に入れながら、量子色力学(QCD)相転移、そしてクォーク・グルーオンプラズマ(QGP)状態を明らかにすることを目標に研究を遂行した。2000年から稼働しているRelativistic Heavy Ion Collider(RHIC,米国BNL研究所)では申請者たちによる相対論的流体模型と、リコンビネーション模型の実験理解の成功によりRHICで強結合QGP(sQGP)状態生成という大きな成果へ至った。さらにLHCの重イオン衝突実験結果も報告され始めた。ここでは最も現実的な現象論的模型である相対論的流体模型の拡張をRHIC、LHC物理解明を遂行した。特に申請者の構築した(3+1)次元の相対論的流体模型と終状態相互作用を取り入れた模型(Hydro+UrQMD model)に粘性流体を組み入れた。この粘性を考慮にいれた相対論的流体模型は、数値計算安定性のために必要な人口粘性が小さく、粘性やゆらぎに対し既存の相対論的流体模型にくらべ、優位性があることを占めることができた。また多次元化も容易であり、すでに3次元のプログラムを完成させることができた。一方格子QCDを用いて第一原理計算からの現象論的模型の基盤作りにも取り組んだ。チャーモニウムのスペクトル関数の詳細な解析結により、擬スカラーメソンのスペクトル関数に媒質効果を見出すことに成功した。これは大きな格子と十分な統計によって世界で初めて測定されたものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粘性を考慮に入れた相対論的流体模型をほぼ完成させることができた。今回開発した相対論的流体模型は最新のRiemann Solverを使用し、重イオン衝突実験における粘性効果などの議論において既存の相対論的流体模型よりも有効性があることを示すことができた。3次元化のチェックも終わり、いよいよ実験結果議論を始める段階にきている。
|
今後の研究の推進方策 |
粘性を考慮に入れた相対論的流体模型が完成したので、それを用いRHICやLHCの実験結果の解析を予定している。今回作成した相対論的流体模型により、より詳細な解析や厳密な議論が可能になった。そのことによって今まで理解されていなかった新しい知見を得ることを期待している。さらハドロンをベースにしたイベントジェネレーターと組み合わせることによって現実的なフリーズアウト過程の記述を実現する。このように重イオン衝突実験の各々の過程をきちんと取り入れた統一的な模型をいよいよ完成させ、今まで議論でなかった実験結果解析に取り組んでいく予定である。
|