研究概要 |
重イオン衝突実験理解を視野に入れながら、量子色力学(QCD)相転移、そしてクォーク・グルーオン プラズマ(QGP)状態を明らかにすることを目標に研究を遂行した。2000年から稼働しているRelativistic Heavy Ion Collider (RHIC,米国BNL研究所)では申請者たちによる相対論的流体模型と、リコンビネーション模型の実験理解の成功によりRHICで強結合QGP(sQGP)状態生成という大きな成果へ至った。さらにLHCの重イオン衝突実験結果も報告され始めた。ここでは最も現実的な現象論的模型である相対論的流体模型の拡張をRHIC、LHC物理解明を遂行した。特に(3+1)次元の相対論的流体模型と終状態相互作用を取り入れた模型(Hydro+UrQMD model)に粘性流体を組み入れた。この粘性を考慮にいれた相対論的流体模型は、数値計算安定性のために必要な人口粘性が小さく、 粘性やゆらぎに対し既存の相対論的流体模型にくらべ、優位性があることを示すことができた。これは高エネルギー衝突実験衝突実験解析を通じ、QGPの輸送係数を議論する上で重要な性質である。しかし今までその重要性についてきちんと議論がされてこなかった。また多次元化も容易であり、すでに3次元のプログラムを完成させている。この相対論的粘性流体の数値計算と数値粘性の評価方法について論文にまとめた(投稿中)。さらに終状態相互作用についても準備が着々と進んでいる。いよいよ具体的な実験解析が可能になった。すでにゆらぎがある場合の初期条件についての解析について結果を出すことに成功した。
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