研究概要 |
近年の超弦理論の研究において、ゲージ理論と重力理論の双対性(ゲージ・重力対応)は中心的な研究テーマの一つである。本研究課題では、このゲージ・重力対応の拡張として、非相対論的極限を研究することを目的としている。 本年度の研究においては、1)AdS空間中のM2ブレーン解の半古典近似,2)squashした3次元球面を標的空間に持つ2次元シグマ模型の古典可積分構造について議論し、それぞれ論文(査読有)として出版した。 1)のテーマについては、AdS_4xS^7/Z_k上のM2ブレーン作用から出発し、静的な1/2BPS古典解の周りで半古典近似をおこない、その揺らぎのスペクトラムを求めた。Z_k orbifoldingを通じて、タイプIIA型超弦理論にreductionした場合のスペクトルについても調べた。また、このスペクトラムのAdS空間の境界での振る舞いを議論し、対応するウィルソンループの微小変形について考察した。ここで議論した半古典近似は、Newton-Hooke代数との関係から AdS/CFT対応における非相対論的極限としても解釈できる。 2)のテーマについては、squashした3次元球面上の2次元シグマ模型の古典可積分構造について、無限次元対称性の観点から考察した。ここで扱ったsquashed sphereは、二重ウィック回転を通じてAdS空間の変形と関係しており、その変形はゲージ理論側の非相対論的極限と関係すると期待されている。このシグマ模型の可積分構造に関する考察から、非相対論的なAdS/CFTの背後に潜む構造を明らかにすることは今後の課題である。この研究内容については、大阪梅田で開催された第4回日露working seminarにおける招待講演で研究発表をおこなった。
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