本研究課題の目的は、ゲージ・重力対応における非相対論的極限を調べることである。本年度の研究においては、非相対論的な場の理論に双対であると考えられる、変形された3次元AdS空間と球面を標的空間にもつシグマ模型の可積分構造について調べた。前年度までの研究成果として、このシグマ模型は無限次元対称性として、2組のヤンギアン代数と量子アフィン代数をもつことを示していた。本年度の新しい成果としては、この2種類の対称性が等価であることを、生成関数であるモノドロミー行列のゲージ変換の観点から示した。この結果は、可積分模型のユニバーサリティの違う対称性の間の等価性を意味し、非常に興味深い。また、この研究内容については、当該分野でもっとも権威のある国際会議「Integrability in Gauge and String Theory」における招待講として発表をした。研究内容のインパクトはこのことからも理解されるだろう。 また、3次元シュレディンガー時空を標的空間にもつシグマ模型の可積分構造についても調べた。前年度までの成果として、2組のヤンギアンとq-変形されたsl(2)対称性(量子群)をもつことを明らかにしていた。本年度の成果としては、この量子群の無限次元拡大について、その代数構造を明らかにした。 さらに、非相対論的な理論における共形対称性、スケール不変性を内在する対称性の超対称拡大について議論した。このような代数は、超重力理論における古典解を探すための手掛かりとして、非常に重要な役割を果たす。可能な超対称拡大について、AdS/CFTで現れる超代数の部分群として分類をした。
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