研究課題/領域番号 |
22740166
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
外川 学 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教 (50455359)
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キーワード | Kの物理 / CP非対称性 / 電磁カロリメタ |
研究概要 |
本研究はCPを保存しないK中間子崩壊、特に直接CP非保存過程である、K_L^O-π^Ovv崩壊を捉え、標準理論を超えた新しい物理を探る研究である。実験は、J-PARCの高強度陽子ビームを用い、平成23年スタートを目標とし、検出器の建設を進めてきたが、平成23年3月11日におこった東日本大震災により、約一年の遅れを余儀なくされた。主検出器であるCsI電磁カロリメタ(以下、CsIカロリメタ)においては、結晶の配置を終えた状態で震災を迎えたが、幸い大きなダメージは受けなかった。しかしながら、結晶が配置位置より5mmほどずれてしまい、その分を考慮した、実験装置の改良や、更なる大きな地震で結晶にダメージを受けない様、対策を行ってきた。 J-PARC加速器は約一年をかけ復旧し、平成24年2月に中性ビームを用いて、ほぼ全数のCsIカロリメタを読み出し、性能評価のためのデータを取得することができた。測定は、検出器上流に、電磁石とチェンバー群を置き、電子の運動量測定を可能とするセットアップで行い、そこで測定される運動量と、CsIカロリメタでのエネルギー損失を比べる事で行う。データは現在解析中である。 また、本実験中、検出器は真空中に配置されるので、読み出し系を含めたCsIカロリメタ全体を真空状態に置き、読み出しなどに問題がないか確認を行った。読み出しそのものに問題はなかったが、冷却系が不十分で熱がこもる事、出力信号の大幅な低下の問題を確認した。後者は特定の物質から放出されるアウトガスが、CsIカロリメタからの光を光電子増倍管に導く、光学接続用シリコン樹脂にダメージを与える事によっておこる事をつきとめた。現在アウトガスを減らし、本実験中に安定動作を行えるよう対策を考案中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災により、検出器のみならず、実験施設であるJ-PARCの加速器もダメージを受けたため。遅れはほぼ一年で、現在は加速器も復旧し、CsI検出器の評価をするためのデータ取得を終えたところである
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今後の研究の推進方策 |
CsI検出器を本実験に向け安定動作を目指す。本年度行ったCsI検出器の真空中動作試験によって、1)冷却糸が不十分で熱がこもる事、2)出力信号の大幅な低下の問題、を確認した。 1)に関してはより効率よく熱を逃がせるよう、発熱源の高圧電源部近くに水冷ヒートシンクを作成する 2)については、特定の物質から放出されるアウトガスが、CsIカロリメタからの光を光電子増倍管に導く、光学接続用シリコン樹脂にダメージを与える事によっておこることを確認した。アウトガスを効率よく排出するよう、真空中でのベーキングや、シリコン樹脂へのダメージを減少させる保護機構等を考案、作成していく必要がある。 以上の対策を行い、再度真空試験を行い、検出器の完成を目指す。
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