フェルミ衛星は、GeV領域の宇宙ガンマ線に対して過去最高感度、角度分解能を誇る望遠鏡である。ガンマ線は、高エネルギーの原子核である宇宙線が星間物質と相互作用することによって放射されるため、宇宙線を研究する上で強力な手段となっている。フェルミ衛星は、2008年6月に打ち上げられて以来、1年間の観測によって、数個の超新星残骸(SNR)が宇宙線陽子の加速源であることを示唆する観測結果を出してきた。本研究はフェルミ衛星によるガンマ線測定を比較的暗めのSNRまで拡張し、SNRの年齢および分子雲の質量に対してSNRが加速した宇宙線総エネルギーとの相関を求めることが大目的である。 平成22年度~平成23年度は、フェルミ衛星1年目カタログでSNRに空間相関が認められた比較的明るめの天体のうち、詳細解析が進んでおらずかつガンマ線で広がっていて空間分布の相関を調べやすい天体であるG8.7-0.1、Cygnus Loop、W44(この天体は立教大・内山氏が主導)について解析を進め、議論をそれぞれ論文にまとめ投稿し、受理された。 前年度までの研究の結果を考慮して、平成24年度は、(1)フェルミ衛星1年目カタログのSNRの詳細な空間分布の評価、を行った。現在、4年以上のデータが蓄積されたため、これらの天体を再度、NANTENグループのCO分子線データ(分子雲をトレース)と詳細に比較した。特にW28では詳細な分布が見え始めたので、論文化を行っている。現在、フェルミチームでの内部査読中であり、近日中に投稿予定である。(2)微弱なSNRへのガンマ線解析のさらなる拡張、を行った。データ解析により、多くのSNR周辺のガンマ線放射分布を検討した結果、Monoceros Loop SNRからと思われる広がった放射を発見した。現在、鋭意解析中であり、こちらも論文化の予定である。
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