研究課題
本年度の研究成果は、以下の3点に集約することができる。1.昨年度得られた知見、特に、3粒子入射過程を記述する新しい反応理論、ファデーエフ理論を用いた研究の数値計算上の問題点、チャネル結合の重要性、本研究の適用限界を、論文・研究発表等によって周知した。2.α粒子(4He原子核)の座標が組み替わるチャネルを取り入れたチャネル結合計算の定式化を完了させた。ただし、当初の予測を遙かに上回る規模の計算が必要であることが判明したため、革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の活用を検討し、効率的な大規模計算の実現に向けた分析を行った。3.大阪大学核物理研究センターの実験グループとの議論により、本研究が主張する、3粒子融合過程の寄与を実証する取り組みを開始した。アイディアの根幹は、炭素12原子核の非弾性散乱を測定し、ホイル状態に対応するピークの裾を精密に測定することにより、3つのα粒子からなる系の、低エネルギーにおける連続状態の性質を探るというものである。これは、3粒子融合過程を実証する、事実上唯一の方法であると考えられるため、本研究にとって極めて重要であると判断し、その測定計画に沿った物理量(非弾性散乱断面積)の計算を優先して実行した。特に3.は、当初の研究計画には含まれていなかったものであるが、上で述べた通り、3粒子融合過程研究にとって本質的であり、低温領域の炭素12生成の理解に対する決定打となるものと期待される。
2: おおむね順調に進展している
実験的実証の可能性が開けたことにより、当初の研究計画からは方針の変更がなされたが、3粒子融合過程の全貌を解明するという最終目的に向け、着実な進展が果たされたと考えられる。
3粒子融合過程の最重要反応である12C生成反応に焦点を絞り、組み替えチャネルを取り入れた計算を遂行する。並行して実験グループとの共同研究を進め、3粒子融合過程の実証を目指す。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (9件)
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