研究概要 |
平成23年度に定式化した、組み替えチャネル入りの3粒子融合反応計算は、数値計算に必要なメモリ(および計算精度)が現在の計算機環境では容易には達成できない事が判明した。その一方で、筑波大学のグループによる計算結果から、研究代表者らによる3α融合反応計算の模型空間(α-α間のエネルギーの上限値)が十分ではないという可能性が強く示唆された。 この情勢を受け、本年度は、α-α間の超高励起状態(反応のエネルギースケールの10,000倍のエネルギーを持つ仮想的状態: 閉じたチャネル)を計算に取り入れる方法の検討を行った。従来の定式化では、そのような閉じたチャネルの自由度は、α-αペアと第3のα粒子が束縛的な漸近状態(減衰解)を持つように境界条件を設定することで表現していた。しかしこの方法では、(1)漸近条件を設定できる数1,000フェムトメートルまで波動関数を解く必要がある事、(2)接続する境界条件が通常の散乱解とは異なるため、数値計算が著しく不安定になる事、といった問題が生じるため、計算の実行は不可能であることが判明した。そこで代替案として、閉じたチャネルの寄与を、コンパクトな基底関数の重ね合わせで表現する方法を検討した。この方法では上述の問題は発生せず、反応計算は実行可能である事がわかった。 一方、平成23年度から開始した、大阪大学核物理研究センターの実験グループとの共同研究(3粒子融合反応の実験的検証計画)は順調に進行し、平成25年3月には、南アフリカのiThemba研究所における最初の本格的測定が完了した。近い将来得られる実験結果と理論計算の比較により、3粒子融合反応の実態が明らかになると期待される。
|