研究課題/領域番号 |
22740172
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
酒井 一博 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (10439242)
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キーワード | 素粒子 / 数理物理学 / 弦理論 / 可積分系 / ゲージ重力対応 |
研究概要 |
4次元ゲージ理論の散乱振幅計算は、原理的には摂動論で任意の次数まで実行可能だが、実際上はすぐに計算量の限界に阻まれる。このような従来の手法の限界を超えて、全摂動にわたる散乱振幅の振舞を調べる試みとして、性質のよいN=4超対称ゲージ理論のグルーオン散乱振幅が近年活発に研究されている。特に、ゲージ理論と弦理論の等価性として知られるAdS/CFT対応に立脚し、古典弦理論を用いてゲージ理論の散乱振幅の強結合極限を求めようという手法が2007年Alday-Maldacenaにより提唱され、この数年で急速に発展している。この手法に基づくと、n点グルーオン散乱振幅の強結合極限値はn角形型の光的境界を持つ古典開弦解の面積として与えられる。この面積は熱力学的Bethe方程式型の積分方程式を解いて計算できることが、Aldayらにより簡単な例の場合に示された。 研究代表者は京都大学基礎物理学研究所の初田泰之氏、東京工業大学の伊藤克司氏、筑波大学の佐藤勇二氏との共同研究において、可積分性を利用し一般のn点散乱振幅を求める方法の開発に取り組んだ。前年度までの研究において、我々ばグルーオン運動量が2次元に収まる場合に、の般のn点散乱振幅を記述する熱力学的Bethe方程式の一般形を提案し、背景にある可積分模型を同定した。本年度は上述の熱力学的Bethe方程式を2次元共形場理論の可積分摂動を用いて解くことで散乱振幅を計算する一般的手法を開発し、論文に発表した。我々の手法は一般のn点散乱振幅の解析的な表式を議論できるという点で画期的である。またCargese(フランス)の研究会において、当該分野の専門家に向けて我々の成果を紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強結合極限でのグルーオン散乱振幅を記述する熱力学的Bethe方程式を2次元共形場理論の可積分摂動を用いて解く方法については、グルーオン運動量が2次元に収まる場合にはほぼ一般的な枠組みが構成できた。完全に一般の運動量の場合についても、技術的な困難が残るものの同様の手法により解析ができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
ごく最近になって、N=4超対称ゲージ理論およびAdS時空背景弦理論の相関関数の計算にも、グルーオン散乱振幅の計算と同様の可積分構造が現れることが明らかになってきている。相関関数の計算に我々の手法を応用する方向の研究は今後重要性を増すと考えられるため、グルーオン散乱振幅の研究と併せて取り組みたいと考えている。
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