研究課題/領域番号 |
22740173
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
伊藤 悦子 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特任助教 (50432464)
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キーワード | 繰り込み群 / 格子シミュレーション / 共形場の理論 |
研究概要 |
4次元で非自明な相互作用を持つ固定点を持つ可能性のある大きなフレーバー数を持つSU(N)ゲージ理論の固定点の存在を、格子ゲージ理論に基づくシミュレーションを用いて調べている。この格子シミュレーションの方法は、時空を格子化する事で第一原理から物理量を非摂動論的に計算でき、理論に対する実験的役割を担い、標準理論を超える模型の構築に予言を与える。 今年度は、昨年度に引き続き、フレーバー数12のSU(3)ゲージ理論について、ステップスケーリングの方法に従いrunning coupling constantを測定し、理論に非自明な相互作用を持つ固定点が存在するかを調べた。 現在の所、研究グループによって固定点の有無に関する結論が一致していない。私の研究によってそれは離散化誤差の見積もり方が非常に重要である事が明確になり、その連続極限を取るときの系統誤差を見積もった上でも固定点の存在が言える事を示した。これに関しては、論文投稿中である。 また、今年度はさらに研究をすすめ、同じ理論において複合演算子の異常次元を測定する新しい繰り込みスキームを提案し、現在その研究も進めている。私は2つ以上の方法を考え、相関関数から直接その異常次元を出す方法と、小さな質量項を共形場の理論に加えることで質量変形させたときの複合粒子の質量スペクトルから異常次元を求める方法の2種類を考えている。今年度はその方法へ至るまでのテストランや、パラメータサーチなどを行った。 最終年度である来年度中に研究を完了させるよう、シミュレーションを既に開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、「赤外固定点の存在を見つける事」とその後で「固定点近傍の普遍量を求める事」である。前者については完了し、後者についても方法を模索しつつ、最終的なシミュレーションセットアップをどのようにすべきか、既にきまったので、概ね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
計画の変更点としては、当初は、結合定数を測るときに生成したゲージ配位データを用いて、普遍量の測定も行えると思っていたが、それでは格子サイズが小さすぎて離散化誤差をコントロールできないことがわかった。そのため、現在、より大きな格子サイズを持つ配位データを改めて作っている。
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