四次元の大きなフレーバー数を持つ非可換ゲージ理論(SU(N)) の強結合領域の理論のふるまいを格子シミュレーションを用いて調べた。その結果、12個の質量がゼロのフェルミオンの結合するSU(3)ゲージ理論には、赤外領域にくりこみ群の固定点が存在する事が分かった。2012年12月に論文としてまとめ、現在論文を投稿中である。 この理論は摂動論的に赤外固定点が存在することが示唆されていた。しかし、近年の格子シミュレーションに依る研究に置いて、国内外10以上の独立したグループがこの理論の固定点の存在について調べているが、結論は分かれている状況である。 私は、その矛盾する結論の原因は2つあると考えた。 一つは、格子化することによる離散化誤差の見積もりを行なっているグループがいないことであり、もう一つは調べている理論の格子作用に依存した相構造に対する理解が不十分であること、である。 そこで私は、理論の相構造、真空構造、カイラル対称性を調べ、格子化によるアーティファクト相ではないパラメータ領域をまず調べた。 その後、理論の非摂動論的な結合定数を調べ、数値データの系統誤差まで考慮しても固定点が存在することを初めて明らかにした。また、固定点を特徴づける臨界指数(ベータ関数の臨界指数)も数値的に測定した。今後はさらに、この四次元で相互作用を持つ固定点の理論の性質(演算子の異常次元、共形場の理論を特徴づける指数)を明らかにすることが課題である。
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