研究課題
チャームクォークやボトムクォークといった重いクォークを含むエキゾチック原子核の研究を行った。具体的には、重い中間子と核子との相互作用を考え、パイ中間子による長距離相互作用と、ρ、ωなどのベクトル粒子による短距離相互作用の両方を考慮し、より現実的な模型を構築した。特に、「重いクォーク対称性」を尊重した有効理論を用いて理論計算を行うことで、より信頼性の高い予言を行った。結果、J^P=1/2^-,1=0のチャネルに反D中間子と核子の束縛解(束縛エネルギー:7MeV、半径:2fm程度)を発見した。この結果を踏まえて、近い将来行われるであろうJ-PARCでの陽子-陽子散乱実験、GSIでの陽子-反陽子散乱実験を想定し、摂動論的QCDに基づいてD中間子原子核の生成断面積とイベント数を見積もった。ここで得られたイベント数は実際の実験での観測可能性を十分裏付けるものであり、これまでに観測されたことのなかった新しいタイプのエキゾチック原子核の発見に繋がるかもしれないという意味において、極めて重要な研究であると言える。また、従来のストレンジクォークを含む軽いエキゾチックハドロンの研究と比較して、用いた有効理論・ダイナミクスが全く異なるにもかかわらず、定性的には同じような束縛状態を予言したことは興味深いことであり、エキゾチック原子核・マルチクォーク状態についてのより本質的な議論への足がかりを与えることも期待される。
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