過去2年の研究でハドロンーハドロンの全散乱断面積は超高エネルギーで重心エネルギーの対数の自乗で増加し、しかもその係数が中間子、バリオンを問わずあらゆる種類のハドロン散乱で同一の値をとることが非常に強く示唆された。 いよいよ欧州Large Hadron Collider加速器実験が始まり、予定通りTOTEMグループが陽子陽子の全散乱断面積の実験結果を報告した。我々の予言する対数自乗係数の値を用いた予言値との一致が確認された。我々の予言はAugerによる超高エネルギー宇宙線の実験結果ともconsistentであり、超高エネルギー散乱振幅の普遍性が確認された。 逆に普遍性を仮定し、陽子陽子、陽子反陽子、πp、Kp散乱の有限エネルギー和則を用いた再解析を行い、対数自乗係数Bの精密決定を行った。この値を用いてさらに高エネルギーでの全断面積を予言することができる。将来のLHCのUpgradeを意識して重心エネルギー14TeVでの予言を行った。また、従来のRegge理論と組み合わせて、中間エネルギーでのあらゆるハドロン散乱の全断面積の予言を行うことができるようになった。我々はこの方法をππ散乱の全断面積に適用し、あらゆる実験データを集めて、検討した。実験データの誤差は大きいものの我々の予言は基本的に正しいことが確認された。米国Wisconsin MadisonのF.Halzen教授、韓国Yonsei大学の C.S.Kim教授と国際共同研究を行い、論文1編を出版した。共著者の猪木慶治東大名誉教授の尽力でこの結果はこの分野の研究者に広く知られるようになり、最新版のParticle Data Groupの解説記事で我々の関連する仕事を含めて多く引用されることとなった。
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