本研究は、流体とブラックホールの対応である「流体・重力対応」を用いて、流体力学を解析することでブラックホール動力学の理解を目指した。具体的な問題として、高次元ブラックホールの普遍的な不安定性(グレゴリー・ラフラーメ不安定性)について理解することを目指し、対応する流体の不安定性について幾つかの重要な結果を得た。まず、グレゴリー・ラフラーメ不安定性の流体対応物であるレイリー・プラトー不安定性の非線形ダイナミクスを追跡する強力な近似法を確立した。また、ブラックホールに対応する流体を解析し、新たな不安定性を発見した。この発見は、純粋に流体力学分野においても重要なものであり、同時に、同様な不安定性がブラックホールにも存在することを示唆している。本研究で得られた成果は、今後のブラックホール研究に対して一つの方向性を示し、重力理論の本質的理解に貢献したと言える。
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