研究概要 |
^<12>C(α,γ)反応は恒星内のヘリウム燃焼期後の炭素/酸素比だけでなく、鉄までの中重元素の合成に大きな影響を与えることが知られているが、恒星内での温度に相当するエネルギーでの反応率の不確定性は大きい。従来の研究では実現できていない、恒星内の温度に近い低エネルギー領域での断面積導出を可能にするため、本研究課題では測定に必要な濃縮炭素12標的の製作とビーム照射中の標的原子核数を導出する手法の開発を行う。 標的の製作はECRイオン源・質量分析用マグネット・ビーム収束用レンズ・試料照射用の真空槽からなる装置を用いて、質量分離した炭素12イオンを金薄膜に注入して製作する。本年度は試料照射用の真空槽内の整備を行った後に炭素12イオンを発生・加速させ、標的の試作を行った。標的製作の指針を決定するため、国際会議(FINUSTAR3)に出席して^<12>C(α,γ)反応測定やイオン注入による標的製作で先行するグループとの情報交換を行った。その結果、ビームエネルギーは数十keVのできるだけ低いエネルギーに設定することが良いことがわかり、これを受けてイオン源からの引き出し電圧を25kVに設定し、炭素12イオンの価数を1または2として標的を製作することにした。装置の調整を行って試料位置で標的製作に十分な10μA以上の炭素12(2価)ビームを得ることに成功し、これを金薄膜に照射して標的の試作を行った。得られた標的の表面には炭化物が付着しており、これにより濃縮度が低下する可能性があることが判明したため、試料照射用の真空槽内の真空度を向上用の真空ポンプを増設して次年度の標的製作に備えることとした。
|